平成21年9月5日(土)、第3回子育て支援勉強会「新学習指導要領で教育はどう変わるか」が開催されました。
今年度より一部先行実施されている新学習指導要領についての講演に、参加した保護者、学校関係者は熱心に耳を傾けていました。
また、新たに設置された「学校問題解決サポートセンター」について東京都より紹介がありました。
「新学習指導要領で教育はどう変わるか」
講師:市川伸一氏(東京大学大学院教授)
学習指導要領は、十年に一度ほどの改訂が行われますが、教育界は振り子のように揺れ動くと言われてきました。
以前の詰込み式の授業の反省に立ち、1990年代以降は、教師が問題を提示して、児童に自力発見や協同解決を促す「教えずに考えさせる授業」が良い授業とされてきた傾向があります。これは、とくに小学校で顕著な動きでした。
しかし、先取り学習をしている児童には非常に退屈である一方、学力の低い子は、討論についていけず、時間ばかり過ぎてしまいます。しかも、教師が丁寧に説明する時間がなくなり、基本的事項すら理解不可能な児童が大量に生まれるという問題点がありました。
今回の学習指導要領の改訂では、すべての教科を通して言語力をつけることと、基礎基本の習得とともに「自ら学び自ら考える力」などの「生きる力」を育てるというバランスが重視されています。また、中教審答申の中で、習得の授業においては、教師がていねいに教えた上で問題解決を行う「教えて考えさせる指導」の重要性が強調されています。
講演の後半では、実際に市川先生が小学校で行った「繰り下がりのある割り算」の授業風景のビデオを視聴しました。教師は、まず学習内容を説明し、教科書を使って理解確認をします。
その後、難度を高くした課題を出して、協同学習しながら理解を深めていきます。最後に、この日にわかったこと、わからなかったことを自己評価して終わるというものです。
子どもたちが説明しあったり、アイデアを出し合ったりする学び方は、社会の中で生きていく力となっていくということです。
すでに新学習指導要領が一部先行実施されていますが、我が子の学校ではどのように授業が進められているのでしょうか。私たちは保護者として、学校現場の変化をしっかりと確認していかなければならないと思いました。
【著書紹介】
●『学ぶ意欲とスキルを育てる‐いま求められる学力向上策‐』(小学館)
●『「教えて考えさせる授業」を創る』(図書文化)
「学校問題解決サポートセンター」について
説明:池口洋一郎氏(東京都教育相談センター統括指導主事)
昨年度、都内の学校へ調査した結果では、1割程度の学校で、学校だけでは対応できない理不尽なクレームがあったと回答がありました。そのうちの半数以上は、学校の初期対応に課題があるために、理不尽なものへと変わっていったそうです。
本来、学校に対しては、本当に不当な要求というものはそんなに多くはありません。問題の早期解決のためには、学校が、その対応力を今以上に向上させることも重要となります。
保護者や地域からの学校への苦情などは昔もありました。しかし、以前は、何か問題が起きた時に、学校へ言うべきかどうかを保護者同士、地域同士で相談しあえる環境があり、そこで解決できるものもありました。今ではそういう繋がりが希薄になっていることも、解決困難な問題の増加の一因になるのではないでしょうか。
学校問題解決サポートセンターは、保護者と学校との問題を解決するため、東京都教育委員会が今年度から設立した全国初のシステムです。
公正・中立の立場で子供のことを第一に考え、解決困難な事例について、保護者、学校双方からの相談を受け付けます。相談を受けた案件を協議し、場合によっては、弁護士、精神科医、臨床心理士などの専門家の助言を受けます。双方の合意があれば、第三者的な機関として、解決策を提示する場合もあります。
保護者の方は、
1.意見・要望等は、まず学校へ相談
2.学校の説明や対応に対して、どうしても納得できないときは、管轄の区市町村教育委員会又は学校経営支援センターに相談
3.それでも解決できないときは、サポートセンターに相談して下さい。
電話:03-5800-0081
相談時間:平日午前9時から午後5時まで